the delivery

2003227日(木)出産当日。

5:50

起床。まずシャワーを浴びて、それからトイレ。出せるものは出しとかないとね。
6:20 お弁当を作る。いつ食べれるかわからないけど、長丁場になった時にオランダ食じゃあ力はいらないもん。
6:50 むろを起こす。なんか酒臭い。「酒臭いよ?」というと「昨日ねれなくて寝酒を飲んだんだ。」と眠そうに答える。
7:30 家をでる。遅刻だぁ。
7:45

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陣痛室。

病院到着。看護婦さんに陣痛室に通される。陣痛室はテレビやらステレオやらトイレやらシャワーやら、色々完備されている。そういえばリラックスできるCDをもってこいってパンフレットに書いてあったなぁ。持ってくるの忘れちゃったよ。

看護婦さんが「まず、これから浣腸をします。」と言った。浣腸?するの?聞いてないよ!「え?」って顔をすると、「昨日言ったでしょ。」と一言。そうだっけ?覚えてないなぁ。「今朝、ちゃんとう○ちしたけど、それでもするの?」ときくと、「それでもするんです。少しでもおなかの中にスペースを作ってあげないと、赤ちゃんが出てきにくいでしょ。」さいですか・・。「じゃ、パンツ脱いでこっちにお尻を向けて。」と看護婦さん。「ちょっとまって、むろ、向こう行ってて!」とむろを追い出す。「旦那さんは見てはいけないの?」と看護婦さん。あたりまえやん!だれが浣腸してる姿を夫に見せるかっつーの。日本人は繊細なんじゃい。

カーテンの向こうにむろを追いやって、看護婦さんにお尻を向けてパンツを下ろす。仕方ないとわかってはいても、情けないよなぁ、この姿。「はい、ちょっと冷たいですよー。」という声とともに、「にゅるにゅるにゅる・・・。」と、えも言われぬ感触が・・。ああ、気色悪い。「はい、終了。10分くらいでもよおしてくるから、そしたらすぐトイレに行ってね。その間、ちょっと質問してもいいかしら?」と問診表を取り出す看護婦さん。むろがカーテンの向こうから戻ってきた。なんだか気まずいわ。

「薬に対してアレルギー反応を起こしたことがありますか?」「家族に高血圧の人はいますか?」などの質問を受けているうちに、きたっ!「きゅるきゅるきゅるっ!」すいません、来ました!とへっぴり腰でトイレに駆け込む。この先はとってもプライベートなのではしょります。

8:05 蘭太郎の心音と子宮の収縮を計る例の機械を取り付けられる。血圧も測る。137/89.あれ?昨日より低いじゃん。なんだよー。
8:15

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出産当日のおなか。すごい下がってる。ムーミンの顔みたい。手もむくんでます。

ベッドに寝ていると、先ほどの看護婦さんともう一人白衣を着た先生らしき人が入ってきて「今から強制破水をします。」と言われた。先生が手を入れて、子宮の膜を破るのだそうだ。流れ出してくる羊水のためにお尻の下に青いシートを何枚も引かれる。とうとうはじまるんだ・・とドキドキする私。先生が私の足を広げて手を中に入れる。ぐぐぐっと押される感じがしたと思ったら、「いででででっ!!!」激痛が走る。破水をするときに「ぱつん!」とか「ぱん!」とかいう音がするときいていたけれど、何にも音はしなかった。(もしかしたら自分の叫び声で聞こえなかっただけかも。)その代わり、何かが流れ出してくる感じが。10ヶ月間、蘭太郎を守ってくれた羊水が流れ出しているのだ。

「それでは、今から陣痛促進剤を投与しますね。利き腕じゃない左手につけますからね。」と看護婦が注射針を持ってくる。バタフライと呼ばれる、その名の通り蝶々の形をしたものの先に針がついたものだ。私の血管は今まで献血に成功したためしがないほどとても細い。今回も看護婦さんが「あれ?あれ?」といいつつ刺したり抜いたりを繰り返してやっと入った。痛い・・。「はい、入りました。」と言われて、「いつごろから陣痛が始まりますかね?」ときいた。すると「午前中に起きればいいですねぇ。」えっ!午前中?ってだってまだ8時だよ。「そんなに長くかかるんですか?」という質問に、「初産だしね。普通促進剤つかうと、3時間くらいで陣痛が起きるんですよ。まあ、人それぞれですけど・・。今日中に産めるといいですね。」といわれてまたもや、えっ?今日中?ってだってまだ8時だよ!!「うまく行けば午前中に陣痛が始まって、うまく行けば今日中に産める、とそういうことですか。」ときき直した。「うまく行けばね。」をーい。まぢかよ。(汗)

看護婦さんが部屋を去り、むろと二人きり。しばらく顔を見合して、「今日、お母さんになれると思ったんだけどな。」と私が言うと、「うーん、でもあなたは何でも早いから、結構早く産めちゃうかもよ。」とむろ。ほんとにそうだといいなぁ。そんな長い時間苦しむのはいややー。

陣痛がつくまでまだまだ時間がかかりそうだからと、むろに家に帰ってもらって忘れたCDとその他もろもろを取りに帰ってもらうことにした。

8:45 むろが病室を去って30分。・・・あれ?おなかが痛いぞ?生理痛みたいだな。まさかね?こんな早く来るわきゃないよな。
9:05 いや、痛いって。なんか規則的にきてる気がするぞ?計ってみると30秒で痛みが消えた。
9:10 あれ?また痛い。5分間隔?もう?いてててて。ナースコールをしてみる。
9:15 看護婦さんが来る。「おなかが痛いんですけど・・。」というと、そばにあった子宮収縮を計る機械から出てきているグラフを見る。「あら。陣痛来てるわ。早いわねー。まだ・・投与してから1時間もたってないのに。もう5分間隔?よかったわねぇ。」と話しているうちに羊水が流れ出してくるのを感じた。止められない。「あわわわわ。羊水が出てますぅ。気持ち悪いですぅ。」というと看護婦さん慌てて私をひっくり返す。いでっ!刺された注射針が動いて痛い。そんな手荒に扱わないで・・。
9:50 陣痛がかなり強くなってきている。漫画を読んでられない。(読んでたのかよ!)でも30秒で痛みは引く。本当に、すーっと引いていく。痛くないときは全く痛くない。不思議だなぁ。・・などと考えていたらまた痛みがやってきた。いてててててっ!むろはまだ帰ってこない。なにやってんだ?慌てて運転して事故にでもあったか?早く帰ってきて背中さすってくれー。いでーよー。
10:06 いでぇ。本当はいけないんだけど、こっそり携帯電話からむろの携帯に電話してみる。あまりにも遅すぎるよ。電話に出るむろ。「もしもし?今どこよ?」ときくと「あ、まだ家だよ。」「なにやってんのよ!(恕)」「え?猫部屋見てた。結構メッセージはいってるよー。」ふざけんなっ!「ばかたれっ!もう陣痛ついてるんだよ!痛いんだよ!速攻帰ってきなさい!!!!」「えっ!もうついてるの?ごめん!今すぐ行く!」

・・・・まったくもう。(-_-;)

10:12 看護婦さんの後ろから助産婦さんが入ってくる。痛みで縮こまる私に「はーい!私があなたの助産婦よ。How is it going?(調子はどう?)」と言って手を差し伸べる。をいをい。こんな時に握手をもとめるなっつーの!痛くて手を出せない私をみて、出した手を引っ込めて待つ助産婦。待つなー!やっと痛みが治まって手をそろそろと差し出す。そしてもう一度「How is it going?」あのなぁ・・。聞くなよ。痛いんだから。みりゃわかるだろ。(恕)痛みのせいで心が狭くなってる私。
10:20 やっとむろ帰る。痛みでうずくまる私をみてちょっとびっくりした様子。そーだよ、いてーんだよ!と思ったらおなかの蘭太郎がわき腹をキック!おーい、この期に及んでなんていう仕打ち・・。
10:30 痛み対策その一として、腰にホカロンを貼る。それをみていた看護婦と助産婦が「それはなんだ?」ときいてきたので「これを貼ると暖かくなるのだ。」というと「それはいいアイディアね!オランダでも売ればいいのに!」ときゃっきゃとはしゃぐ。
10:40 あぐらをかいてみる。ちょっといい感じ。あぐらをかいて呼吸法をやってると、なんだか修行僧のような気分。ちなみに呼吸法は「ひっひっふー。」痛みの波がきたら深呼吸を一回、そのあとは「ひっひっ」と浅く吐いて、「ふーっ」で吐ききる。痛みがなくなるまでそれを繰り返す。とにかく痛みがきたら呼吸に集中する。そうすると少し痛みが逃れる感じ。
11:00 むろが持ってきたCDをかけようか?というので、適当に選んでかけてもらった。・・・♪ぼーんつびーわーーーいるどっ♪選曲ミス。
11:10 痛みが3分間隔になってきた。でもまだ余裕あり。看護婦さんが入ってきて熱を計る。38度。普通だったら辛い発熱も、陣痛の痛みのせいか、熱があるなんて全く感じない。血圧は141・84.少し上がったかな?
11:25

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奥にある薄緑と白の機械がNST。

おにぎりを食べる。でも一個の半分で食べれなくなった。ちょっと吐き気がする。朝から何も食べてないから、なんか食べなきゃいかんのに・・。と考えているとむろが「じゃあ黒砂糖なめてれば?」そうか、黒砂糖があった。黒砂糖とかブドウ糖はすぐエネルギーになるから持ってきたほうがいい、といわれていたのだ。日本で買ってきた沖縄産「おしゃぶり黒砂糖」を口に放り込む。あまーい。うまーい。力が沸いてくる感じー。(単純)

痛みの波がくる。今回の痛みはかなりでかい。分娩監視装置(NST)を見ていると数値が40まで上がっている。この数値は子宮の収縮の強さをあらわしていて20以上だと収縮していて、数値が高ければ高いほど収縮が強い、つまり、痛みが大きいということだ。陣痛が始まる前は16くらいだった数値が、陣痛が始まった初期の頃に25くらいがピークだった。でも、今回は40をあらわしていた。最大数値はどれくらいなのかしら?この装置は先にも書いたが、赤ちゃんの心音も同時に計測している。蘭太郎の心音は破水されてからも安定していた。破水して大量の水が外に流れているにもかかわらずこんなに安定しているものなんだとちょっとびっくり。今現在、蘭太郎は寝ているらしい(心音のグラフが一定間隔に揺れているときは寝ているときなんだそうだ。)こんな時でも寝てられる蘭太郎、お前はきっと大物になるに違いない。とすでに親ばか。

いででででっ!でかい波がきた。NSTをみると58まで数値が上がってる。さっきより間隔も短いぞ?むろに言って次の陣痛までの時間を計ってもらう。次の波がくると、むろが「一分だったよ。」一分?もう一分間隔なの?もしかして子宮口全開なんじゃないの?それぐらい痛いよ。痛みの感じもちょっと変わってきた。だいたい一分間隔だと、間隔が短すぎて、痛みがひいててもまだ痛いような気がする。で、そのうち本当の痛みがくるからずっと痛い気がするのだ。痛みは生理痛のかなーりきついやつ。腰をハンマーで打たれてる感じといえばわかるかな?

11:40 痛みに耐えられず、ナースコール。私の様子を見て、助産婦を呼んでくれた。「子宮口の開きをみましょうね。」と足を広げられる。なにやら下の方でもぞもぞやっているが、陣痛の痛みの方が強くて何も感じない。心の中で「どうか開いてますように・・。」と祈る。顔を上げた助産婦が、「2cm開いてるわね。」と一言。ええええ!たった2cm?そんなぁ〜。全開(10cm)までまだまだじゃんか〜。(涙)気落ちした様子の私とむろに助産婦が言った。「あら、朝より2倍広がってるのよ!」2倍・・ってそりゃそうだけど・・。
12:30 数値が50を超える痛みがどんどんやってくる。いまや痛みは押される感じに変わっている。いきみたいという思いが強くなる。でも子宮口が全開じゃないのにいきんでしまうと子宮が破裂したり、赤ちゃんにとっても危険になるからいきんではいけない。いきまないために、むろに肛門のあたりをマッサージ器具で押してもらう。痛みがくるたびに「もっとつよくおしてぇぇぇぇ!」という叫び声が陣痛室に響き渡る。痛みが引いた瞬間にむろにありがとう、頑張ってねと言おうと思って後ろを振り向いた。(私は横向きに寝ていた)するとむろが週刊誌を読みながらマッサージ器具を私のお尻に押し付けている姿が目に入った。ずいぶん余裕じゃねぇか。えっ?(-_-;)
12:45 これ以上痛いってどんな痛み?って程の痛みが次々襲ってくる。「ひっひっふー。」をしている余裕もなくなってきた。思わずナースコール。やってきた看護婦に「痛みを何とかしてください。我慢できません。」と訴える。すると、傍らに座って私の手を握り、「ひっひっふー。」いや、そうじゃなくて・・。(汗)まるで私は聖母マリアといわんばかりの微笑を口にたたえ、やさしく「ひっひっふー。」してくれる彼女に「そうじゃなくて」とも言えず、思わず一緒に「ひっひっふー。」する私。
12:55 やさしい看護婦さんと一緒に「ひっひっふー。」もやはりあまり効果はなく、今度ははっきりと、「麻酔打ってください!」といってみた。すると看護婦さん、「OK」と言って部屋を出て行った。ああ、我慢しないで最初からそういえば良かった。
13:10 出て行ったきりいっこうに帰ってくる様子のない看護婦に痺れを切らして再度ナースコール。「何?」と顔を出した看護婦さんに「あの、麻酔は・・。」というとちょっとムッとした様子で「今用意してるの。」こんな状態の患者を前にムッとするな!はよせい!
13:15 やっと麻酔。「これはモルフィンだから、打ったら眠くなるからね。」と言いながら背中に注射する看護婦さん。注射の痛みは全く感じない。「どのくらいで効きますか?」ときくと「15分くらいかしら。」とのお答え。15分か・・長い・・。看護婦が去った後、私の背中側にまわったむろが「うわっ!すごい血が出てる!」と叫んだ。注射されたところから出血しているらしい。でも看護婦は去ってったぞ?いいのか?
13:30 薬が効いてきたらしい。確かに猛烈に眠くなる。でも痛みで目が覚める。痛みは収まってないぞ?ただ、痛みが引くと気を失うように寝てしまうから、どのくらいの時間が経っているのかよくわからなくなってきた。痛み→寝る→痛み→寝るの繰り返し。むろはひたすら後ろでお尻を押している。
13:50 助産婦がやってきて部屋を移りましょうと言う。分娩室に移動らしい。やっといきめるのか?!看護婦に「歩ける?」と聞かれる。歩けるわけねえだろ!!ベッドのまま運ばれる。分娩室は陣痛室の倍の大きさくらい。でもベッドに足を乗せるような器具はない。いきむ時につけるのかな?
14:10 いったんはずされていたNSTをつけられる。蘭太郎の心音が元気よく響き渡る。「とってもよい心音よ。安定してるし。」ほっとしたのもつかの間、子宮収縮を表す数値が72を記録した。本日の最高値。
15:10 ここまで、ひたすら痛みと眠気が繰り返す。痛い時はものすごい痛みだが、痛みが引くとぱったりと眠りに入る。実際この間の記憶があまりないが、むろはこの間が一番辛かったという。どんなに強く押しても、「もっともっと!」と叫ばれたからだそうだ。(覚えてない)

助産婦が入ってきて子宮口の開き具合を見る。5cmから6cm。まだそんなもん?まだ半分?ショックで気を失いそうになる。が、看護婦と助産婦は私の横で「すごいわねぇ。もうこんなに開いてるわよ。早いわぁ。初産なのにねぇ。」と感心しきり。

16:50 またもや記憶が途切れているが、ひたすらいきみたい間隔と戦っていた模様。覚えてないが、この間の私の叫び声は「出ちゃう出ちゃうよー!」だったそうだ。出そうだったらしい。

子宮口の開き具合を見た助産婦が「あら!もう全開してるわ!すごいわね!」と声を上げた。えっ?全開?待ちに待ったその一言がやっと聞けたのに思わず耳を疑った。「ってことは、いきんでいいんですか?」と聞き返す。「次の陣痛の波で、おもいっきりいきんで頂戴。」やった!GOサインだ!産めるぞ!やっと産める!その瞬間はうれしさで痛みを忘れた。

16:55〜 いきみ開始。足を固定する器具をつけられるのかとばかり思っていたら、右腕で自分の右ひざをすくい上げるようにもて、と言われる。左手は陣痛促進剤の針がついてるので、使えないため、むろに私の後ろに廻って左足を抱えろ、と指示が飛ぶ。

陣痛の波が来た。大きく深呼吸、顎をひいて、おへそをじっと見て、ぐぐぐぐぐぐ〜!渾身の力を込める。「いいわよ!素晴らしいいきみだわ!そのままそのまま!」と助産婦の激が飛ぶ。再度、力を込めていきむ。今度は看護婦が「すごいわ!なんて力なの!」と感嘆の声を上げる。こんな状態なのに褒められてちょっとうれしくなって思わず調子に乗ってもう一回いきもうとしたら、痛みが引いた。ちっ。

何度も何度もいきむ。しかし、蘭太郎は出てこない。「分娩台に乗って10分で産まれました。」「3回いきんだら産まれちゃった。」というような安産文句が頭の中をよぎっては消える。既に30分経過。一向に出てこない蘭太郎。「おかしいわねぇ。こんなにすごいいきみなのに・・。きっと彼はシャイなのよ。」ジョークを言って笑わそうとする助産婦。いやいや、笑えんって。

この間、いきんでいるときの痛みはほとんど感じない。陣痛の波に乗っていきんでるから、痛みはあるのだろうけれども、出そうとしている分痛みは感じないのかもしれない。ただ、ひたすら疲れる。一回いきむとものすごい力を使うから、連続していきむのがすごく大変。いきむたびに「あなた、もしかして水泳やってた?」とか「じゃあ、乗馬は?」と聞いてくる助産婦。私が答えないとむろに「ねえ、彼女はスポーツウーマンなの?」ときく。なんでそんなことが知りたいんだ!

50分ほどいきんで、まだでてこないのを見ると、助産婦が「方法を変えましょう。ベッドの上に座って。」と指示した。ベッドの上に座れ?そんなの無理だよぉ。と半べそな私。でも助産婦は容赦ない。私の手をつかんで座らせようとする。そしてむろに「あなたはそのまま彼女の後ろに座って。ほら、ベッドの上に乗って!」と指示。どうやら私の背もたれになれと言っているらしい。一体何をするんだと思っていたら看護婦が中央に穴のあいた小さな椅子を持ってきた。その上に座ってその穴の中に産み落とすらしい。ひーっ。なんとか椅子に座って陣痛の波を待つ。次のが来たところでいきみ開始。すると、真下に手鏡を助産婦が置いてくれた。「ほら、頭が見えるでしょ!」確かに、頭らしきものが見え隠れしている。これが蘭太郎!もうそこまで来ているんだ!と思わず感動しそうになった私の目線の先に、ぽつんと見えた突起物。あれはお尻の穴の辺り・・・。はっ!あれはもしや、痔?!やばい。やばすぎる。いきみすぎで痔が出ちゃってるよ。蘭太郎の頭が見えた感動は吹っ飛んでいた。

しかし、その態勢でいくらいきんでもやっぱりでてこない。結局椅子をはずされてもとの態勢に戻される。うーん、なぜだ。助産婦もさすがに痺れを切らした様子。もう1時間以上いきんでいることを考えるとちょっと危険かもしれないと言い出した。あと2回いきんで、駄目だったら、ドクターを呼んできましょう。と言う。ドクターを呼んで何するんだ?ここまでがんばったのに、帝王切開とかそういうこともあるのか?ちょっとパニクる私。じょーだんじゃない。こんなに辛い思いをして結局帝王切開なんて!その時の私は何も言われていないのに勝手に帝王切開だと決めかかっていた。そして、次の波で残っている全ての力を出していきんだ。

助産婦が叫ぶ。「あっあっ!もうちょっと!頭が出てきそうよ!もうちょっと!!!」いきみすぎて視界がかすむほどの力でもう一度押す。助産婦の手が膣の中に入り込む。「切るわよ!」と一言言って、じょきっじょきっという音がする。痛みは感じないのに、切られる感じだけはある。思わず今までにないくらいの叫び声を上げる。いくら痛みを感じなくても、肉を切られる感覚は恐怖だ。(本当は直前に麻酔をかけられていたのだがそれはきづかなかった。)恐怖で叫び声をあげる私を抱えるようにむろがうしろから私を抱きしめる。

「あともう少しで出るわよ!さあ、いきんで!ぷっしゅ!!!」助産婦が叫ぶ。後ろでむろが叫ぶ「あ!頭が見える!頭が見えてるよ!もうすぐだよ!」看護婦が私のおなかを思いっきり押す。まるで搾り出すように。本当に、最後の、最後の力を振り絞っていきみをかける。

18:10 でた!!!」みんなの声が聞こえた。助産婦が「いきむのをやめて!ふっふっふっっていう短い呼吸に切り替えて!」と指示を出す。指示されたとおりにふっふっふっと呼吸を切り替える。何かがずるっと出て行く感じがする。「少しだけいきんで!」と助産婦。「ふんっ!」とおなかに少し力を入れると、溜まっていた何かが、ずるずるずるっと出てきた感じがした。助産婦さんが出てきた赤いものを私の胸の上にどさっと置いた。それが、蘭太郎との初対面だった。むろが上ずった声で「お疲れ!本当にお疲れ様!ありがとう!ありがとう!」と繰り返していた。生まれた瞬間は「ふぇっ。ふぇっ。」とか細い声を上げていた蘭太郎だが、私の上に乗せられて「おぎゃぁー!!!」大きな声を上げた。

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はじめまして。

「こんなに大きな子が入ってたんだもの、出てこないわけよねぇ!」と助産婦さん。看護婦さんがすかさず、「名前は?」ときく。むろと私は顔を見合わせてこう答えた。「陸玖。彼の名前は陸玖。」大陸で生まれた私たちの黒い宝石。生まれたときから黒々と髪の毛を生やした陸玖は、本当に私たちの「黒い宝石」だった。小さな小さな、私たちの宝石。生まれてきてくれてありがとう。私たちを選んできてくれてありがとう。真っ赤で、私の体内の色んなものがくっついたままの汚れた、まるで濡れた子犬のような陸玖は、今まで私たちが見た何よりも、綺麗で、美しかった。涙が、止まらなかった。

しばらくして後産がはじまった。軽くいきむと胎盤がずるっと出てきた。10ヶ月間、おなかの中で陸玖を包んでくれていた胎盤。助産婦さんが見せてくれた。「ご苦労様でした。」と思わず声を掛ける。看護婦さんが「これを研究のために使わせてもらっていいかしら。」ときいてきた。「どうぞ、大事に使ってやってくださいと答えた。」助産婦さんがむろに声を掛けた。「へその緒、切りますか?」はっきりした声で「YES!」と答えたむろ。あんなにへその緒を切るのを嫌がっていたむろなのに、楽しそうに切っていた。この長い10時間、むろは献身的につきそってくれていた。陣痛中も、いきんでいるときも、一緒に戦ってくれていた。立ち会ってもらって本当によかった。ありがとう。

助産婦さんが、「おっぱいあげてみる?」というので、あげてみた。おっぱいを近づけると、見えないはずの目で必死におっぱいを探す。そしてとても大きな口をあけて乳首をほうばった。まだ出ているはずもないおっぱいを一生懸命吸っている陸玖。また目が涙でいっぱいになってしまった。そのまま一時間、分娩台の上でうとうとしたり起きてむろと話したりしてすごした。その間ずっと、私の股のあいだでは助産婦さんが縫い物をしていた。(笑)

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ちなみに産んだ直後のおなかはこうなりました。

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生まれた直後の陸玖。

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そして現在の陸玖。

というわけで、陣痛促進剤を打ってから10時間、いきみ始めてから81分の出産劇でした。自分では死ぬ思いをしたような気がする出産だけど、初産で10時間って、立派な安産の粋に入るんですってね。私を産むのに丸2日苦しんだ婆、あなたは偉い。陸玖は今現在、どんどん大きくなっています。育児は本当に大変だけれども、陸玖の笑顔を見てればそんな辛さも吹っ飛びます。子供って本当に不思議。毎日毎日がとても楽しい。

私とむろの愛情をいっぱいに受けて、元気に、健やかに、いい子に、育って欲しい。そう思います。いつか陸玖が大きくなったとき、このレポートを読んで欲しいし、自分が育児に疲れたときに、もう一度読み返して初心に帰るためにこのレポを書きました。陸玖がどれだけ待ち望まれて生まれてきたか。それをずっと忘れないために。

長々とお付き合いくださいましてありがとうございました。しばらくは今までの様にまめに更新はできないかもしれないけれど、合間をぬって出産後のレポや育児日記なんかもつけていきたいと思います。よろしく!

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